臭い

「スメハラ」とは「スメルハラスメント」の略で、最近この「臭い」によるトラブルが社会問題となっています。

大手化粧品メーカーのマンダムが2014年に行った調査では、職場の身だしなみで気になることの上位は「ニオイ(体臭)」「口臭」という結果が出ています。

今回は臭いに関する悩み「スメハラ」にスポットを当て、気になる臭いの種類やスメハラの対策、相手を傷つけない伝え方、臭いが引き起こす体調不良など詳しくお伝えします。

そもそもスメハラとは?

まだあまり浸透していない「スメハラ」という語は、「臭い・匂い・香り」という意味の「smell」と、「嫌がらせ」という意味の「harassment」がつながった「スメルハラスメント」の略語です。

迷惑な「におい」ということで、この記事では「臭い」という字を使わせていただきます。

「セクハラ」や「モラハラ」は良く使われているので馴染みがありますが、スメハラという単語は2010年頃から使われて普及し始めました。

「smell harassment」は海外での認知度は高く、アメリカでは裁判沙汰になったケースもあるほどです。

中でも受動喫煙などたばこに関する被害を「スモーキング ハラスメント」略して「スモハラ」と呼ばれているようです。

特に上司など社会的ポジションの高い人は加齢や汗のニオイ、体臭など自分では気づいていない場合が多く、知らず知らずのうちにハラスメントになっている場合が多いようです。

臭いを感じる仕組み

そもそも、臭いとは様々な分子が結合してできたものです。

地球上には40万種類以上もの臭い分子がありますが、そのうち人間が嗅ぎ分けられるのは1万種類ほどです。

臭いの分子が鼻に入ると、鼻腔内の嗅覚細胞にある嗅覚受容体(センサー)でキャッチされます。

その後、神経線維から脳内の「嗅球」と呼ばれる嗅覚中枢に情報が送られます。臭いの情報は嗅球で処理され、大脳へ伝達されて臭いとして認識されます。

臭いを嗅ぎ分けるメカニズムはアメリカの二人の学者によって解明され、2004年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

加齢臭や口臭などの体臭

スメハラとしてよく取り上げられるのは、会社の上司・同僚の加齢臭や口臭が困るという内容が多いようです。

一般に、密室のオフィスは臭いがこもりがちです。机が近くの場合、目の前や横、背後から臭いが漂い、スメハラに悩む人が多くいます。

ただし、体臭は個人の体質なども関係するために、一概に否定や指摘をすることはできません。

香水や柔軟剤もスメハラに

体臭に続いてスメハラになりがちなのが、香水や柔軟剤の臭いです。

自分がお気に入りでも、他の人が好むとは限りません。特にエレガントの象徴である「香水」は、付ける量によって臭いの強さが変わります。

ここ数年で人気が高い柔軟剤も、香りを長く持たせようとして多めに使用すると臭いが強くなり、敏感な方は不快と感じるようになります。

電車やエレベーターなどの狭い空間では、特にスメハラに苦しむ人がいます。

喫煙者は気づきにくいタバコ

一昔前のオフィス内や飲食店はタバコの臭いが充満していましたが、最近では喫煙スペースを設けるなど配慮がされています。

しかし、喫煙しない人はタバコの臭いを敏感に感じるため、衣服に付いたタバコの臭いや車内に残った臭いもスメハラになることがあります。

タバコの臭い

ベランダでいわゆるホタル族の喫煙により、タバコの煙が風に乗って流れてくる場合もスメハラとして感じる人も多く、中にはぜんそくや頭痛などの重篤な症状に悩まされている方もいらっしゃるようです。

たばこの煙をくゆらせるという個人にとってひとときの楽しみも時には他人に迷惑をかけることもあるのですね。

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その他の不快な臭い

その他の気になる臭いとしては、次のようなものがスメハラとして挙げられます。

  • 口臭
  • 衣服や靴の臭い
  • 浄化槽や家庭のゴミや排水
  • ペットの臭い
  • 畑の肥料
  • 飲食店の排気
  • 工場や作業所の排気や排水
  • ゴミ処理場の臭い
  • ビニール類を燃やす臭い

ゴミの臭い

ある焼き肉店の換気扇からは油のような煙がガンガン出ていて、「近隣住民は夏でも窓も開けられないだろうな」と住民の方の胸中を想像しました。

公害レベルの臭いになると自治体や国が対応しますが、会社や近隣のスメハラは感じ方に個人差があるため、なかなか対策が進まないのが現状です。

スメハラの対策が難しい理由

ここで、なぜスメハラの対策がスムーズに進まないのか理由を考えてみました。

加害者の自覚がない

自分自身の臭いは日常的で慣れているため、迷惑をかけていると気づかないことが対策の難しい点です。

多くの人は、自分の体臭や口臭がスメハラになっているという自覚がありません。

香水や柔軟剤の臭いも、本人は大好きな香りを使用しているため、スメハラの加害者とは感じにくいかと思われます。

臭いには個人差がある

もともと生物の体臭は、求愛の際にアピールする手段の1つです。

同じ体臭を心地よいと感じる人もいれば、苦手に思い避ける人もいます。

また、香水や柔軟剤などでも、自分が好きな香りは必ずしも他人が好きであるとは限りません。

臭いの感じ方は個人差があるため、特定の臭いが不快な人もいれば平気で過ごせる人もいます。

一方、女性の約8割は自分のニオイを気にしすぎるという自意識過剰の傾向にあるといいます。

更年期を迎えると汗を抑えるホルモンが減少するため、多量の汗やわき汗が気になるらしいのです。

名誉毀損に関わることも

冒頭で述べました「マンダムの調査」では、9割を超える人が「ニオイは指摘しにくい」とし、その理由は「相手が傷つきそう」と回答しています。

特に体臭は個人の体質が関わるために、指摘した行為が名誉毀損として訴えられる可能性もあります。

スメハラの対策として、相手を傷つけない伝え方は後ほど紹介しますので参考になさってください。

スメハラ対策その1~風向き

それでは、スメハラの具体的な対策方法を見て行きましょう。

一般に、臭いの分子は風上から風下へ流れていきます。室内でのスメハラ対策は、定期的に窓を開けて換気をするなど、風向きを変えることをおすすめします。

エアコンや扇風機の利用

エアコンの使用時には、フィンの向きを調節し空気の流れを変えてみましょう。

扇風機も同様の効果があり、最近では卓上のミニ扇風機も販売されています。

ただし、風向きを1箇所に固定すると直風が当たってしまう人が出てきます。周囲を気遣いながら、スメハラ対策を試みてください。

空気清浄機やサーキュレーターの使用

社内や家庭で余裕がある場合は、他の家電でスメハラ対策を行うことも可能です。

空気清浄機は花粉や雑菌の除去だけでなく、イオンの効果が期待できる種類もあります。

サーキュレーターは空気の循環を目的にしている機器で、部屋全体の空気をかき混ぜて暖房や冷房の効率を良くしてくれます。

スメハラ対策その2~消臭剤

スメハラの対策として次におすすめするのは、消臭剤の使用です。

しかし、消臭剤も臭いによってはそれ自体がスメハラの加害者になってしまいます。

また、気になる相手の机上に堂々と置いたり、勝手にスプレーしたりすることは避けましょう。

空気の消臭剤

近年では、置き型やシートのタイプ、スプレーなど様々な消臭剤が発売されています。

たくさんの香りの中から好きなものを選べますが、一歩間違うと消臭剤がスメハラになる可能性も否定できません。

無難な柑橘系や、微香や無香のタイプ、備長炭などを対策として選んでみてください。

衣類の消臭剤

布用の消臭剤も、便利なものが多数販売されています。

しかし、いくらスメハラの対策でも、気になる相手の私物に勝手にスプレーすることはおすすめしません。

「私も使っていますがリフレッシュできますよ」「今日は大切なお得意様がいらっしゃいますね」などと一声掛け、相手の了解を得てから使用するようにしましょう。

スメハラ対策その3~マスク

マスクはある程度の臭いをシャットダウンできるため、スメハラの簡単な対策としておすすめします。

通常のマスクで対処

マスクは購入しやすく、スメハラの対策としては一番簡単な方法です。

しかし、1日中使用しているのは抵抗があるでしょう。

他にも、メガネがくもる、化粧が落ちやすい、夏場は暑くて使えない、耳の後ろが痛くなるなどの難点があります。

長時間が厳しい場合は、臭いが気になる時だけ使って対策をしましょう。

濡れマスクの効果とは

臭いの対策として、濡れマスクも効果があります。臭いの分子は、水に吸着しやすい性質があります。

水の分子が臭いの分子を取り囲むと、鼻の嗅覚センサーが感知しにくくなります。

しかし、濡れたマスクを長時間付けることに抵抗がある場合は、香りつきのマスクも市販されているので試してみてください。

アロマオイルを使って香りつきマスクを作る人もいますが、アロマオイルの原液は濃度が高すぎるため、薄めるか一旦ティッシュなどに含ませてから付けるようにしてください。

スメハラ対策その4~各種グッズ

ご紹介した以外にも、スメハラ対策に便利なグッズでよく聞かれるものを見てみましょう。

ニオイ測定器

自分のニオイが気になって仕方がないと言う方には「ニオイ測定器」と「スマホの専用アプリ」でニオイの強度を調べることができます。

10段階のうち3以下でしたら、安心して仕事に集中できます。高ければ、シートなどで汗を拭きとれば数値は下がるでしょう。

スポーツ店などで購入できます。

汗拭きシートを推奨

夏場は、営業などで社員が汗だくで外出先から戻ります。

扇子を仰ぐ風と共に流れてくる汗の臭いが、スメハラと感じる時もあるでしょう。

労いの気持ちを込めて、「よかったらお使いになりますか」と汗拭きシートをさりげなく渡してはいかがでしょうか。

相手が女性の場合には女性用の汗拭きシートを用意し、「便利ですよ」などと勧めて対策をしましょう。

制汗スプレー

色々な種類がありますが、制汗成分が入っている場合は汗の出口をふさぐことになりますので、使用するところは脇の下と足の裏だけにしましょう。

それ以外のところをスプレーすると、汗の出口が閉ざされ、熱中症などを引き起こしてしまいますので注意しましょう。

ガムやタブレットをおすそ分け

口臭は、歯周病の場合や体調が悪い時に強くなる傾向があります。

相手を気遣いながら「お疲れが溜まっているようですがいかがですが」とミント風味の清涼菓子を勧めてはいかがでしょう。

タブレットは、食べた後に出す必要がないので便利です。飲食禁止の職場では、休憩時間などにおすそ分けをしてスメハラ対策をしてみてください。

スメハラの対策その5~伝え方

先の調査結果では、9割以上の人がスメハラを指摘しにくいとしながらも、6割を超える人が「自分が臭っていたら指摘してほしい」と答えています。

ここでは、「相手を傷つけずに臭いを伝える方法」を紹介します。

会社での対処方法

ダイヤモンド・オンラインが2015年に会社の人事部や総務部、広報部に対して行った調査では、2社に1社が「スメハラがある」という回答を得ています。
http://diamond.jp/articles/-/71886

加齢臭や口臭など、体に関わる臭いをスメハラとして本人に直接指摘することはおすすめしません。

冗談で軽く言える間柄であれば、さりげなく伝えるのも1つの対策です。

スメハラに悩み、仕事に集中できず業務に差し支える状況の場合は、まず信頼できる上司に相談してみましょう。

上司が行動を起こさない時には、総務部や衛生管理者などに伝えてください。

多くは社内報にエチケットやスメハラに対する内容を載せたり、朝礼の短いスピーチで臭いに関する内容を盛り込んだりして対処します。

会社によってはマナーや歯磨きなどを就業規則に盛り込んだり、直接本人と面談して伝えたりして対策するケースもあるようです。

家庭や近隣の対処方法

同じくマンダムが2013年に行った夫婦間の調査では、夫の枕の臭いや足の臭いが気になるという結果が出ています。
http://m-age.jp/smell/detail/1-01.html

ほとんどの家庭では相手に直接伝えられ、洗濯などで対策できますが、近隣のスメハラに関しては難しくトラブルに発展するケースもあります。

洗濯物の柔軟剤の臭いだけでなく、ペットの臭い、タバコの臭い、ゴミの臭いなど、生活圏内で起きるスメハラは想像以上に多くあります。

直接伝えるのは気が引ける上に、臭いの感じ方は個人差があるためトラブルにもなりかねません。

まずは、信頼できる自治会のメンバーにスメハラ対策について相談してみましょう。

集合住宅の場合は、管理組合や不動産会社に相談するのがベストです。

うまく話が進まない時は、市役所に相談するのも1つの対策です。同じようにスメハラに悩む家庭が数世帯集まると、話が伝わりやすくなります。

スメハラの対策その6~訴えることはできる?

臭いの感じ方は個人で異なるため、限度を超えるような悪臭でない限り違法にはならないと考えられます。

ただし、ゴミの臭いや排気などで多くの人がスメハラに悩まされる場合は、映像や臭気計などや医師の診断書などの証拠を確保し、専門家や弁護士に相談することは可能です。

実際の裁判では次のような事例が報告されています。

◎名古屋地裁 ベランダ喫煙で5万円の慰謝料命令

◎神奈川県 職場での受動喫煙によって心臓病を再発したと『スモハラ(スモーキングハラスメント)』を訴えた民事訴訟の控訴審で、会社側が男性に100万円を支払うことで和解

プロに対策を相談する際は費用や日数がかかるため、賛同・協力してくれる人を集めるのがよいかもしれません。

しかしながら、上記のように重篤な症状に悩む場合は速やかに医者にかかり、その経過を(できれば第三者にを通して)相手に伝えて解決に向うのがよいでしょう。

スメハラによる症状の対処法

会社や近隣で常にスメハラに悩まされ、中には体調が悪くなる人もいます。どのようにスメハラの対処をすればよいのか、簡単にまとめました。

ストレスによる頭痛

臭い自体の問題というよりも、「またあの臭いを嗅がなければならない」というストレスが溜まって体調が悪くなるケースもあります。

人間の体は、ストレスを感じるとコルチゾールなどのホルモンが分泌されます。

コルチゾールが過剰に分泌されると血圧や血糖値が上昇し、頭痛の原因になります。また、ストレスを受けると交感神経が優位に働きます。脳内の血管が緊張して細くなり、筋肉が硬くなって頭痛が起きます。

常にスメハラを気にしていると頭痛は治まりません。マスクを使用したり、自分の好みの香りを用意したり、外出したりして気分転換を図りましょう。

症状が重い場合は医療機関を受診し、状況を伝えることをおすすめします。

柔軟剤の分子に注意

近年、スメハラとして取り上げられる柔軟剤は、国民生活センターにも相談が寄せられており、相談件数は毎年増加しています。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130919_1.html

柔軟剤に含まれる化学物質の分子が体内に取り込まれると、喉の痛みや咳が出る場合もあります。

症状がひどい時には、医師に相談することをおすすめします。

日本石鹸洗剤工業会が2010年に行った調査では、3割近くの人が柔軟剤を多めに入れると回答しています。また、2割以上の人が標準より2倍以上の量を使用していることもわかりました。

日本石鹸洗剤工業会では、柔軟剤をたくさん入れると香りが強くなるだけでなく、洗濯物の吸水性が低下すると説明しています。
http://jsda.org/w/06_clage/4clean_226-3.html

化学物質過敏症とは

現代の世の中にはたくさんの化学物質が溢れているため、化学物質が原因で体に不調をきたす「化学物質過敏症」に悩まされる人もいます。

化学物質過敏症については、アメリカの大学教授であるMark Cullen氏による定義(MCS)と、アメリカの医学博士のWilliam Rea氏による定義(CS)があります。

反応する物質や症状は人によって異なるため、医療機関では問診を詳しく行い、血液検査などを経て診断を下します。

公害などでは精神疾患の不安も

公害レベルの臭いになると、スメハラという概念では済まされません。

化学物質過敏症だけでなく、喘息やアレルギー症状、中毒症状なども現れます。

また、常にストレスに晒されることから、うつ病や不安障害などの精神疾患を抱えるケースもあります。

重篤な被害が出る場合は自治体や国が対策に当たるので、まずは市役所などに相談してください。

口臭を予防する薬草

最後に口臭の予防法として昔から伝わる民間療法で身近にある薬草を使います。植物に関連する歯磨き剤なども効果が期待できます。

1、ナギナタコウジュの葉茎15gの煎汁を少しずつ口にふくむ(一日4、5回)。

2、サイシンの全草10gの煎汁を少しずつ口にふくむ(一日4、5回)。

3、カンアオイの全草10gの煎汁を少しずつ口にふくむ((一日4、5回)。

以上、いずれも三分間ほど口に含み、くちゅくちゅした後に吐いて捨ててください。

おわりに

今回は、スメハラの対策についてお話してきました。

スメハラは、加害者が気づきにくい上に伝えづらいため、なかなか対策が進まない点が難しいところです。

スメハラの対策グッズもご紹介しましたが、効果的なものは見つかったでしょうか。

まずは一人で悩まずに、同じようにスメハラの被害を受けている仲間を集め、信頼できる人に相談するのも対策の1つです。

辛い状況をずっと我慢していると体調を崩すこともあるため、スメハラの対策は積極的に考えてみてください。

また、この機会に自分が発している臭いや生活臭などについても見直し、皆が快適に過ごせるよう工夫をしましょう。

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