全米オープンテニス 2016(アメリカ/ニューヨーク、ハード、グランドスラム)7日目。
男子シングルス準々決勝のお相手はなんと、リオデジャネイロ・オリンピック男子シングルスで金メダル覇者の 『アンディ・マレー』(英国)選手。
マレー選手とは今回が9度目の対戦で、過去の成績はアンディ・マレー:錦織=7:1と圧倒的にマレー選手が上回っています。
ところが、その金メダル覇者であり、絶好調のアンディ・マレーを3:2で錦織選手が見事に撃沈してしまいました。
今回、オリンピック王者のアンディ・マレーを破った最大の勝因は錦織選手の落ちついたプレーとどんな窮地にもあきらめない精神力を備えた最高のコンディションであろうと思います。
更に、今回は均衡した試合の勝敗を左右する3つの神がかりな出来事「雨と蛾と音」が話題に上がっていますので、その詳細を見ていきましょう。
錦織vsマレーの過去の対戦成績
まず、2016 全米オープンテニスの結果の前に錦織vsマレーの過去の対戦成績を見ておきましょう。
<2011年>
上海マスターズ準決勝 A・マレー 6-3, 6-0 錦織圭<2012年>
全豪オープン準々決勝 A・マレー 6-3, 6-3, 6-1 錦織圭<2013年>
ブリスベン国際準決勝 A・マレー 6-4, 2-0 途中棄権 錦織圭<2014年>
ATPツアーファイナル予選 錦織圭 6-4, 6-4 A・マレー<2015年>
ロジャーズ・カップ準決勝 A・マレー 6-3, 6-0 錦織圭ムチュア・マドリッド・オープン準決勝 A・マレー 6-3, 6-4 錦織圭
<2016年>
デビスカップ A・マレー 7-5, 7-6 (8-6), 3-6, 4-6, 6-3 錦織圭
リオデジャネイロ・オリンピック準決勝 A・マレー 6-1,6-4 錦織圭
tennis365.net
一棄権を除いて、アンディ・マレー:錦織=7:1と圧倒的にマレー選手の勝利が多いです。
ところが、2011年から2013年の試合内容では圧倒的にマレーの優勢感が否めないようですが、近年の内容を見てみると、2014年にマレーを破ってから棄権はありましたが、ほとんど紙一重のセット・ゲーム内容になっています。
2016 錦織 速報 全米オープンテニス
オリンピック準々決勝ではこのアンディ・マレーに完敗したにもかかわらず、錦織圭選手は2016全米オープンテニスでは、4時間にも及ぶ死闘で見事アンディ・マレーを制しました。
錦織VSマレー戦の内容
第1セットはマレーの強烈なバックハンドのリターンに押されてブレイクをゆるし、1-6で落としてしまいました。
第2セットは主導権をマレーに握られていたにもかかわらず、第7ゲーム途中で雨が降り始め試合は一時中断。マイケルチャンコーチのアドバイスも功を奏し6-4で取り戻し、セットカウント1:1に追いつきます。
第3セットは一進一退の攻防が続くも、このセット3度目のブレークを許し、惜しくも4-6でセットを落としました。セットカウント1:2でマレーが優勢。
第4セットは6-1で取り返して、セットカウント2:2の同点に追いつく。
第5セットのファイナルセットでは、まったく互角の攻防戦の中、第11ゲームでマレーのダブルフォルトで流れが変わった。
錦織、試合を決めた執念の反応/準々決勝 全米オープンテニス2016【WOWOW】
マレーを激怒させたこのプレーはテニス史上に残るベスト名場面となるでしょう。まさに神業!
錦織はこの後、第11、第12ゲームと連取して7-5とをファイナルを制し、マレーから勝利をもぎ取りました。
試合の勝敗の決め手
勝敗の決め手は錦織選手の終始落ち着いたプレーにマレーが自滅した感じですが、相手選手を精神的に追い込んだ稀有な3つの要因がありました。
1、雨の音
第2セット、マレーは閉じた屋根に当たる雨の音が気になると抗議したが、聞き入れられず流れが変わり、結果このセットを落としてしまいました。
2、飛び回る黄色い蛾
マレー選手をイライラさせたのは、錦織選手だけではなく、マレーのコートに飛び回っていた「黄色い蛾」のせいだとか。
4時間という長丁場、たった1匹の蛾にさすがのマレーも集中力が切れたのかも知れませんね。
3、ドラ(鐘)?の音
第4セット最中「マレー選手のストロークがきれいに決まった!」の直前に中国のドラみたいな大きな音がして、審判は試合を止めていたそうで、当然ノウカウントで、やり直し。
屋根が閉まった時の機械音?スピーカの音?でしょうか、この音の原因はわかっていません。
途中、錦織ムードを後押しする観客の拍手も「集中して聞こえなかった」とこぼしたが、研ぎ澄まされた集中力はおそらくゾーンに入っていたのではないでしょうか?
全米オープンでの錦織の過去の成績
錦織選手は2014年にグランドスラム初の決勝進出を果たし、M・チリッチ(クロアチア)に敗れ惜しくも準優勝でした。
2015年は1回戦でB・ペール(フランス)にフルセットで敗れ、敗退。
今回の全米オープンで2年ぶり2度目のベスト4進出を果たしたことになります。
2014年にいきなり準優勝まで行っているんですね。今大会はなんとしても先の大会を超えていただきたいものです。
おわりに
ここまでくれば、初優勝が手の届くところに見えてきましたが、準決勝では、ワウリンカとリオデジャネイロ・オリンピックで銀メダルのデル=ポトロとの勝者と対戦になります。
金メダルを獲得したアンディ・マレー選手を撃沈した錦織選手、怪我もなく、調子も上々なようなので、大いに優勝が期待されるところですが、まずは準決勝を乗り越えるか注目したいと思います。
そして決勝にはおそらくジョコビッチが上がってくるでしょうから、ジョコビッチとの決勝戦での対決を見てみたいものです。
PS.
S・ワウリンカがJ・M・デル=ポトロを7-6 (7-5), 4-6, 6-3, 6-2で下して2年連続のベスト4に上がりました。
したがって、錦織選手と準決勝で戦うのは、ワウリンカ選手と決まりました。
ワウリンカとの対戦は今回が6度目となるが、気になる勝敗は錦織選手の2勝3敗とわずかに劣勢気味。ですが、先ごろのロジャーズ・カップの準決勝では錦織がストレートで勝利。また、2014年の全米オープン準々決勝も錦織がフルセットでワウリンカを下しており、五分五分の試合となりそうですね。
準決勝 錦織VSワウリンカ戦 速報
さて、先程行われた全米オープンテニス 2016の準決勝 錦織VSワウリンカ戦は6―4、5―7、4―6、2―6で敗れ、決勝進出を逃しました。
終始ワウリンカの落ち着いたプレーに阻まれ、精彩を欠いたプレーとなってしまい、残念でなりません。
全体を通して、まず第一サーブが決まらないので、結果厳しいラリーが続いた末にワウリンカのテクニックで終わるパターン。平凡なリターンミスも目立ち、錦織らしからぬ精彩を欠いたプレーに自らもテンションが上がらないままで終わってしまったようです。
でも、日本人がグランドスラムで活躍するなんて夢をかなえてくれた錦織選手にお疲れ様のエールを送りたいと思います。